ラップを使い切った
有名メーカーのものではなく、スーパーのプライベートブランド品で
ギザギザでのカットが妙にしづらく、皿にもうまくくっつかない
要するに低品質で使いづらいものだった。
 
 
このラップは、貰い物だった
 
いつだったか、東京の東の端の方に用があって出かけたとき
駅前のスーパーに寄った
こまかい経緯は覚えていないが、飲み物とシベリヤ(どら焼きだったかも)を買って
店の前のベンチで食べた覚えがあるから、おやつの時間だったのかな
 
その時、店でポイントカードを作った
初めて来た店で、今後立ち寄る機会があるかも怪しいのだが
大抵はただで作れてポイントが付き、少なくとも損はしないということと
店の名前の入ったオリジナルカードが手に入るのがうれしくて
作れる店ではいつも作ってしまう。この日もそうだった

このときは、新規に会員になると粗品をくれるキャンペーン中かなにかで
店員さんがどこかからラップを持ってきて、買ったものに加えてくれた
カード欲しさに会員になって、なおかつラップまで貰ってしまい
なんだかすいません、という気分になった
 
 
 
そして時はしばらく流れ、そんなことは忘れていたけど
使っていたラップが切れ、新しいのを戸棚から出すかとなったときに
ストックの中に、馴染みのないメーカーのものが紛れていて 
使ってみてなんじゃこりゃ、使いづらいな、なんでこんなものが家にあるんだろう
と考えて、ラップを入手したときの一連の出来事を思い出した
 
ラップというのは案外長持ちするので
使うたびに、一回しか行ったことのないスーパーのことを思い出すことになる
 
たよりないギザギザ、弾力のあるラップ。切るのにはこつが必要だ
あまり引き伸ばさないように、ラップの端に当てたギザギザの一点に力をかけ
強めに斜めに一気に引く。
皿に吸着しないので、しっかり手で撫で付けないといけない。
これらは徐々に習得してきたことだ
 
経緯が経緯だけに、使いづらいなと文句を言うのもなんか悪い気がして
そのうち、なんだかんだで憎めない奴、という佇まいが発生していった


それをついに使い切った
ひとつの物語が終わったような
義理を果たしたような気分になってくる
 
いずれそのスーパーに行く機会があれば、カードを忘れずに持っていくようにしたい
同じラップはまだ売っているのかな
あったらつい欲しくなってしまいそうだが買わないようにしたい。