幼稚園児の頃のこと
通っていた幼稚園では、先生が画用紙で作った花や動物といった
飾りが窓にセロハンテープで貼り付けられ、デコレーションされていた
色とりどりの画用紙にマジックで描かれた絵を
その形に沿って切り抜いたかんじのもので、大小様々あったように思う
 
絵は、その季節に即したモチーフで統一されていて
季節が過ぎると、新たな季節に準じた絵に貼り替えられることになっており
その際剥がされた古い飾りは、ほしい子供に配布されるという流れが定番だった


ある時、チョウチンアンコウの飾りが貼られていたことがあった
多分魚や海のモチーフで統一されていたので、夏の時期だったのかな
細かいことは覚えていないが、とにかくチョウチンアンコウがあった
 
黄色い画用紙だったと思うが、二重丸のとぼけた目つきに
にっこり笑ったたらこくちびるの、コミカルなものだった
 
その絵が、とても好きで
貼り替えが近くなると、配布されるのが待ち遠しかった
欲しかったんだよね
でもこんなに魅力的な絵だから、 きっと競争になることだろう
戦々恐々としながら、ついに配布されるときがきた
 
 
先生がひとつひとつ、絵をピックアップし
「ではイルカがほしい人」
「ペンギンがほしい人」 
といったかんじに子供に手を挙げさせる
人気があるものも、そうでないものもある
欲しい人が複数居たらじゃんけん等の方法で決着をつけ
次々に引き取り手が決まっていく
 
「チョウチンアンコウがほしい人」
かなりの緊張感と覚悟でもって元気に挙手をしたが
他にほしい人はひとりもいなかった
奪い合いが起きることもなく、すんなりと我が物になった
記憶にある限りでは、この時人生で初めて拍子抜けの気持ちを味わった


以後かなり大事にしていたが、わりと早い段階でチョウチン部分がちぎれてしまい
悲しかったがまあ子供の取り扱いだしデリケートな部品だから当然起こりうる
セロハンテープを包帯のように巻きつけて補修したことを覚えている
 
それも引っ越したりなんだりするうち、どこかへいってしまった
捨てたとは考えにくいからどっかしまってあるのかもしれないけど。
 
テレビにチョウチンアンコウが出てきてそのことを思い出した