ファミリーレストランに入った
ガストというチェーン店
ファミリーレストランあまり好きではないのだが
待ち合わせまでの時間をつぶすのに丁度した場所にあったので
甘いものでも食って休憩しとこうと思ったのだった
ファミリーレストランの好きでない最大の理由として
食事をしようと思って入っても、提供される食い物のジャンルが豊富すぎて
目移りしてしまい、しかもどれも決定打に欠けるので
何を食っていいのかわからなくなるためであるから
甘いものに的を絞ってから入店するぶんには大きな問題にはならない。
フレンチトーストにした
自信がある品というようなことがメニューに書かれていたので素直に従った
おすすめのメニューが書いてあると悩まなくて済むから大いに助かる。
しばらくすると、フレンチトーストがやってきた
とてもうまそうだったので、このうまそうな食べ物を記憶しておきたいと思い
メモ帳にフレンチトーストの簡単な絵と、うまそうであることをメモしたが
それでは足りない気がして、スマートフォンのカメラで撮影することにした
スマートフォンのカメラは、被写体が何であるかを判別して
最適な画質に調整するような機能があるらしい
詳しくはわからないが、カメラを向けると人間の顔を認識したり
夜景を感知したりして適切な処理がなされるようだ
フレンチトーストにカメラを向けると、カメラの画面に
「料理」という表示が出た
思わず、「よくわかったね」とつぶやいてしまった
どういう仕組みなんだろう、何をもって食い物だと判別できたのか
光の具合か、距離感か、なにをもって目の前の光景が料理であると断定したのだろう
フレンチトーストをどけて、食器洗い用スポンジにすりかえたとしたら
カメラはどんな反応をするだろうか、料理じゃないとわかるのかな?
かなり不思議に思ったが料理が冷めるのでさっさと撮影して食べることにした
食いながら考えていた
きっと写真を撮った際、カメラのほうでよりうまそうに撮れるよう
色具合なりなんなり調節がなされていたのだろう
過去にこのスマートフォンで、いろいろなものの写真を撮ったことがあるが
それぞれの被写体にあわせた調整を勝手にやってくれていたのだろうか
なんとなく、カメラというのは目の前の光景を無機質に
機械的に写し取ってくれているような気がしていたから
カメラ側が作為的に調節してくれていたということに
作為の存在に
妙な薄気味の悪さのようなものをうっすら感じたのだった
いやしかしそうはいっても
人間の目にも、そもそも調節が多分に含まれている
うまそうだな、という気持ちは目の前の食べ物をうまそうに見せる
泥団子とチョコレート、見た目は似ていてもその違いが判別できるとき
片方は実においしそうに、片方は土だな、というふうに見る
光を目で感知するということ以上の、それは調節であるかもしれない
そういう臨場感は、写真に撮ることである程度損なわれる
記憶とともに風化してしまう部分でもある
そういう部分を少しでも取りこぼすまいと、カメラ開発会社は努力を重ね
テーブルの上のフレンチトーストを「料理」と識別できるほどの
カメラテクノロジーを実現したのかもしれない
進歩の方向性としては、不思議でも気味悪いものでもないのかもな
フレンチトーストのうまそうさは恐らく写真に保存されたわけだし
というようなことを考えながら
フレンチトーストは確かにうまかった
付属のソフトクリームの冷たさがいいアクセントになっていたと思う
メープルシロップのパックも付属していたのだが、うっかりしてそれはかけ忘れた
持って帰ってきたので明日コーンフレークかなんかに使うことにする