お陰様で単行本「動物たち」が重版となり
品切れていた通販サイトの在庫も復活しているみたいです
ご愛顧感謝致します



別な話
朝クール宅急便で荷物が届いた
送り主は北海道の札幌にあるカレー屋で、中身はその店の冷凍のカレールウだった

まったく心当たりがなかったが、おれ宛になっており
誰かが送ってくれたものらしい

昨年初めて北海道へ行き、札幌にも立ち寄ったので
その関係かな、とも一瞬思ったが、随分間が開いている上
そのカレー屋もそもそも記憶にないし
滞在時にカレー関係のものを食べてすらいないのである

埒が明かないので、カレー屋に電話してみた
その件を伝えると、やはり誰かが来店して発送の手配をしていったらしい
その時、すぐにカレーの在庫がなく、増産してから今回の発送となったので
来店から発送までにしばらく期間があり、残念ながらどんな人物だったのかは
もう覚えていないという

しかしわかったことは、いくらか前の時期に北海道のカレー屋に行き
カレーを送る手配をした人物がいるということだ
たとえば通販でうちに届くよう注文したとかであれば、記録が残るはずなのだ
つまりこの送り状の字は、恐らく送り主がその場で書いた字であると思われる

文字をじっくり見る
いくらか癖のある字だが、見覚えはあるようなないような
少なくとも頻繁に見る筆跡ではないように思われた
字の癖で瞬時に見分けることができるほど書き文字を見た人物は
家族以外ではたかがしれているので、その中には居ないようだ
過去に貰った郵便物や手紙をひっくり返し、てきとうに見比べてみるも
似た字の人がいるようにも見えるが
住所だけでは筆跡のサンプルには少なく、確証は全く持てない


可能性として、おれがすっかり何かを忘れているというのもありうる
むしろ、その可能性が高い
念のため、過去に貰ったメールを「カレー」で検索してみたが
残念ながら(?)それらしいやり取りはなかった
何か過去に口約束でもあったのだろうか

まるっきり縁もない、見たことも聞いたこともないカレー屋と思っていたが
もしかすると記憶が抜け落ちているだけで、何か重大な由縁のあるものではないか
自分自身からの記憶の出てこなさ加減に疑わしさを覚える
こんなに何の手がかりもなく、物的証拠だけがぼんと届くものだろうか
記憶喪失になっているような、ぼんやりした謎、雲を掴むような
久しぶりに難易度の高いミステリー気分を味わってる


あとはこの日記に書いておくくらいしか方法はない
おれの無礼によって忘れているのだとしたら申し訳ないのですが
もしカレーの送り主の方がこの文章を読んでいたら、ご連絡下さい
お礼を言いたいので



最も恐ろしいのは、送り主が送ったことを完全に忘れている場合だ
おれが何かを忘れているように、送り主の記憶からも抜け落ちていて
この文章を偶然目にしたとしても、思い出さなかった場合
完全に迷宮入りすることになる

すでに迷宮入りに片足突っ込んでいる状態である冷凍カレーを
食べてしまっていいものだろうか
ひとまずはもう少し寝かせておこうと思う