父方の実家を訪ねた
実家の建物を近日建て替えるため
ものを整理しているということで、最後に家を見たいなと思った
整理はそれほど進行していなかったので、まだいつもの雰囲気が残っていたが
それでも着々と引っ越しの準備をしているかんじだった
祖父が大工だったこともあり、父が幼少の頃から増改築を重ねた家屋で
おれが知っているのは、その歴史全体からみたら後半か、ほんの少しかもしれない
それでも幼少時から長期休暇になると家族で帰省して、滞在したもんだった
それは特別な休みの特別な行事というのもあり、全体にハッピーで新鮮なかんじの思い出だが
それでいて動物の剥製や妙な民芸人形が並んでいたり、玄関チャイムの独特な音
急な階段や様々な模様ガラス、 入り組んだ建築構造など
なんとなく子供心に底の見えない不安や薄ら怖さを感じるところもあった
またそこが好きなところでもあった
写真を撮ったり、家の部品を貰ったりした
壁にかかっている飾り物とかで、新しい家に移設する予定がなかったりするものや
解体の際に一緒に壊してしまうもので、取り外せて運べるものなんかのうち
なるべくこの家の記憶が強烈に残っている物品を譲ってもらった
自分の部屋に移設するためだ
接ぎ木というか、忘れがたみというか、そんな気分で
たとえばドアノブひとつ自分の部屋のと交換することで、せめて一部分でも
失われた家の気配を活かして動態保存したいと思ったわけであるが
貰ってきた部品は、自宅に着いて見てみると、どれも生気を失ったようになっていた
野原に咲いていた花をつんできても、しばらくすると枯れてしまうような
あの家にあったから魅力的であった
血が通っていたのだな
家とともに解体される一足先に摘み取ることで息の根を止めてしまったようで
ちょっと罪悪感すら湧いてくる
なかなか難しい
これらは予定通り自宅に設置する。いつか自宅の血が部品にも通って
それは元の気配とは違うものかもしれないけど
おれが惜しんで据え付けたということも踏まえて末永く部品として機能してほしい
それはそれで悪くないのではないかと思う