歩いて甲府へ向かう
新幹線の線路に沿って歩いて行けば着くことは知っていた
線路を見失わないように歩いて行くと、山沿いの未舗装の道になった
道の先にトンネルがあり、赤く錆びた大きな鉄扉でふさがれていた
トンネルの周囲に着物がたくさん干してあり、それがひらひら動いていて
一瞬人間がたくさん居るように見えてどきっとする
トンネルの脇のあたりから、おじさんが現れる
この先は通行止めで通ることができないという
ここではじめてスマートフォンでマップを開いてみると
簡単と思われた道のりはけっこう曲がりくねり分岐も多く
距離も相当あることがわかった
出発してもう一時間四十分ほど来てしまったが、今からでも引き返して
出発地点付近の駅から新幹線に乗るのが懸命に思えてくる
そのおじさんは、ウルトラマンの初代スーツアクターで
「◯愛さん(◯の字は失念)」という名前だった
丁度持っていた古いパンフレットに◯愛さんに関しての評論文が
偶然載っており、それを◯愛さんに見せるが初めて見た知らない文だと言う
◯愛さんに車で駅まで送ってもらえることになる
二階が店舗で一階が駐車場になった建物の方へ車を取りにいく
軽トラに載った◯愛さんがこちらに向かってくるが、おれを見失ったらしく
一度車を置いて小走りで現れ、きょろきょろしている
おれは少し離れた場所にいて、手をふって合図をする