台風が接近している夜中だがさほど強風というわけでもなく
雨音だけがしている
雪によって歪んだ雨樋から雨が漏れる音が最も大きくびたびたと鳴っていて
それ以外の雨がそれを補うようにぼつぼつ満遍なく鳴っているという具合
音を聞きながら寝ようかと思ったがどうも眠れないので日記書く
珈琲を寝る前に飲んでしまったからだな

台風は、南の海からやってくる
いま降っている雨は南の海から蒸発してきた水ということだな
たとえば、アマゾン川を流れて海に行った水も含まれているだろう
ミシシッピ川もあるかもな

水の来歴を考え始めると、無限だ
ラーメンのつゆだったことのある水、だれかの涙、北極の氷
恐竜の唾液、りんごの果汁、 コカ・コーラ
そういうもんが蒸発したり海に流れたりして、またどこかに雨になって
降ったりする。空から降ってくる雨粒みんな別な何かだったことがある
無数のものに出たり入ったりしてるのもあれば、ずっと長いこと
海の底をぐるぐるしていた水がなんかの拍子にやって来てるかもしれん

ぼつぼつ雨の音ひとつひとつにそれぞれの無数の来歴がある
気が遠くなる
そのことをよく考えながら寝る